街 は 劇場

劇場女優・街子です。

指輪をなくした。

指輪をなくした。(ついでにピアスも)(それも片方だけ)

何かをなくす時、なぜこうもあっけなく、わたしの前から忽然と、もう忽然ととしかいいようのない素早さ、唐突さで居なくなるんだろう。
大事なもののはずだった。
興味本位で行ったヨガスタジオで失くした。鍵はちゃんとかけて居た(気がする)
着替えが全て終わって、荷物も片付けさあ帰ろうかな、という時ロッカーの隅に置いて居たあのルビーの綺麗な指輪がなくなって居た。あんなに綺麗だったルビー。
確か祖母から母に受け継ぎ、そして母がわたしにくれたものだった。
大事なもののはずだった、大事にしていたはずだった。
お守りみたいにつけて、外すときは必ずお財布に入れて失くさないような仕組みで外していたのに、今日に限って、今日に限って。
せめてさよならくらい言ってくれればいいのに。
大事なものを失くしたとき、それが大事にしていなかったことの証明になってしまったようでとても悲しい。大事なもののはずだったし、大事にして、愛していたのに。
こうやって、何かなくすとき、音も立てずにそっと、忽然とわたしの前から失せていくことをわたしは学んだ。

多分、家に帰ったら必要最低限のアクセサリーを処分してしまうだろう。わたしに今、アクセサリーを愛していく自信がない。

これを書きながらわたしは泣いている。書かないと、気持ちを整理しないと涙が出ないほど、わたしの心も何かを失っているのかもしれない。

ただ、何か失くしたと気づけることはまだ救いようがある。失くしたことさえ気づかなければ心の中で、一方的でもさよならが言えないから。

(4/17 執筆 5/21 加筆)